長野県は、障害者や高齢者など誰もが安心して観光を楽しめる環境が整った「信州型ユニバーサルツーリズム」の確立を目指している。今年度を初年度として7月に推進会議を初開催した。信州大学と連携してモデルコースの造成に着手しているほか、地域に対するアウトドア用車いすの導入支援事業も実施する。今後、複数年をかけて意識の共有や受け入れ態勢の充実を進め、将来的には県民を挙げた運動にしていく。
信州型ユニバーサルツーリズムでは、サポート機器などを活用しながらも、バリアフリーのハード整備だけに偏らず、山岳、高原、スキーなどの長野県らしい観光資源を旅行者に楽しんでもらえるよう、地域で受け入れに当たる人材や組織、仕組みの充実を目指す。
7月に初開催した長野県ユニバーサルツーリズム推進会議は、県観光部を事務局に、市町村、観光協会、DMO、観光関係事業者、福祉関係者をはじめユニバーサルツーリズムに関わる団体・個人などが幅広く参加している。関係者の情報共有や県内への理念の普及につなげる。
第2回の推進会議は10月8日に長野県富士見町の富士見高原リゾートホテル八峯苑で開かれた。会場の富士見高原リゾートは、2010年からユニバーサルツーリズムを推進し、サポート機器の導入によるアウトドア体験の提供、社員を挙げたおもてなしで、17年度に県主催の「信州おもてなし大賞」も受賞している。当日は、旅行会社や県内関係団体の担当者によるパネルディスカッションなどが行われた。
モデルコースは県内に6コースを造成する。対象エリアは、富士見、戸隠、飯山、阿智昼神、白馬。白馬エリアは夏、冬の計2コース、他のエリアは夏のコース。近くモニターツアーを実施して、宿泊、移動、アクティビティ、サポート人材などの受け入れ態勢や旅行の魅力を検証する。来年2月に開催予定の第3回推進会議などでモデルコースを披露し、誘客に向けて情報発信していく考えだ。
サポート機器の活用では、アウトドア体験に適応した車いす、身体に不自由があってもスキーが体験できるデュアルスキー(着座式スキー)の導入を県が補助する。市町村や観光事業者を対象に近く公募する。支援対象となった地域には、機器の導入にとどまらず、受け入れ態勢の整備を促していく。
信州型ユニバーサルツーリズムの形成構想では、今年度から2カ年をかけ、推進会議などで受け入れ意識の改革を進める。3~4年目には、各種団体に連携を拡大して推進態勢を強化。県内のDMOにサービスの標準化を促すほか、学習旅行の受け入れなどに取り組む。5年目以降は、県民運動への発展を目指す。
富士見町で開かれた第2回長野県ユニバーサルツーリズム推進会議